羽生善治


簡単に、単純に考える (PHP文庫)

簡単に、単純に考える (PHP文庫)

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

同じ著者なので内容が被っているところもあるので二冊一緒に。


羽生善治
知らない人はいないだろう。棋士である。
96年には将棋界始まっていらいの7冠を達成。
若い印象のある彼だが、もう36歳。


この二冊は羽生善治が将棋というものを通して、自分の考え方を述べている本である。
読んでわかったのだが、おそらく他のどんな業界でも羽生さんなら
羽生さんが同様の考え方をして実践してるのなら、結果を残せているだろうということだ。


つまりもう私は成功するための条件を理解しているのだ。
しかしその条件は成功するための十分条件でしかない、ということだ。
(あってるかな?必要条件、十分条件についてはそんなに自信ない。)



この本を読むきっかけは羽生さん自身への興味と、棋士とはどのような考え方をしてうっているんだろうという興味である。

最善の一手の追求。
その考え方。
これは人生における様々な決断においても使えるんじゃないのかと考えている。
最善の決断、最適な決断、そういったもの考え方にどうやら私は興味があるようだ。
だからこそ、羽生さんはどのように考えているのか。
その頭の中を覗いてみたかった。

わかったことは、うつときは大きく分けて『読んで』うつのと『大局観』によってうつ方法があるということだ。
前者は単純に手を読んでいって結果を見てみるというものであり
後者は局面を見て直感で判断するものである。
当たり前といえば当たり前でもある。

前者はコンピューターが得意とするもので、現在では終局にあたる部分ではもうコンピューターには勝つのは難しいレベルにあるらしい。
手を読んでいって、その結果を評価判断するのは人であり
その評価判断もコンピューターに任せるようにしなければ
コンピューターが人を抜くことは難しいのではないかと考える。

羽生さんは『簡単に単純に考える』で

思考の過程を省略する方法とは本質を見抜く目だと考えている。

人は考える中で色々な『余計』なものを考慮してしまう。
できるだけ情報を手に入れ、総合的に判断するということが重要だとは思う。
しかしそれ以上に情報を捨てることも重要である。
その上で思考を省略して、一手を見つける。

それが最善手への一歩だと彼は述べていた。


今の時代情報を多く手に入れることはたやすくなった。
しかしその多くの情報に縛られてしまい、情報によって最善の手から離されることになってることも多々ある。
そういった時代の流れが情報を捨て、思考を省略する技術が重要性を増しているのではないだろうかと納得させられた。

盤面は果てしなく複雑になっていく。論理的な思考ばかりしていると局面が複雑になり答えがわからなくなると、判断が難しくなるのだ。

これも上の内容と同様であるが、決断をするにあたっての一つの真理に近いものだと思う。

以前に読んだ下記の二冊からも同様のことを考えさせられた。

道は開ける 新装版

道は開ける 新装版

ルービン回顧録

ルービン回顧録

道は開ける、は言わずもがな有名なベストセラーであり、その中でもウェイト・フィリップの言葉を引用し

私が思うに、問題をある限度以上に考え続けると、混乱や不安が生じやすい。それ以上調べたり考えたりすれば、かえって有害となる時期がある、それが決断をし実行し、そして絶対に振りむいてはならない時期なのだ。

デール・カーネギーは述べている。
そしてルービン回顧録では、ちょっとどこにそういったことを書いてあったかは覚えていない。
直接的にそういったことは述べられていなかったかもしれないが
どちらにせよ、できる限りの情報を集め、努力をし、そして決断をするときになったら決断をすることが絶対に重要だということは述べていた。

これらは羽生さんがいう思考を省略することに反しているように聞こえるかもしれないがそうではない。
3人とも、考えられるだけ考えて、あるタイミングでは思考を省略し決断に至れということだ。
言葉にすれば簡単だが、究極的な問題だ。
もしこれを可能にすることができるのであれば、その人は世間一般でいう人という生命を超えたものに至っていると思う。


この本は買ってよかった、そう思える本だ。
786円と安く、しかも面白い。
私はそんなに本を読むのが早いほうではないが、2時間程度で読みきった。


買うなら特に『決断力』の方を買うといいと思う。
『簡単に、単純に考える』は二宮清純平尾誠二、金出武雄らとの対話から
羽生さんの考えを聞いていくというものだ。

もちろんこちらも興味深い。
しかし羽生さんの考えを深く知りたかったので結果的には羽生さんの言葉の多い『決断力』の方が印象に残った。


これ以上集中すると「もう元に戻れなくなってしまうのでは」と、ぞっとするような恐怖感に襲われることがある。

にしても彼はやはり天才に属する人なんだろう。
七夕の国(漫画、岩明 均)的にいうと手が届く人なんだろう。


(岩明 均 の漫画はほとんどが傑作なので読んだことない人は一読を
 今連載中のヒストリエも楽しみにしてるんだけどなかなか進まない・・・)